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jamstack's Introduction

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バズるためにジョイマンARを作ろうとしたら権利周りとかめちゃくちゃ苦労した話
著作権 AR ARKit Unity ジョイマン
fushikky
false

先日、twitterで投稿した以下の動画がちょいバズりしました。

うちのテレビからジョイマン出てきたwww pic.twitter.com/Ob74vN9JbX

— ふしっきー (@fusikky) August 30, 2019
<script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script>

こちらはジョイマン高木氏にリツイートしていただいたことも相まって、2019年9月頭時点で約4400いいねの反響をいただきました。大変ありがたい限りです。

内容としては、「テレビでジョイマンのコント動画を見ていると突然テレビからジョイマン高木氏(の3Dモデル)が飛び出してくる」というもので、技術的にはARでジョイマン高木氏の3Dモデルを表示し、テレビから高木氏を消す、今流行り(?)のDR (Diminished Reality, 隠消現実感)を実現しています。

こちらの動画についてなぜやろうと思ったのか、苦労したところ、大変だったところを含めてコンテンツの選定から動画公開までの経緯を以下の流れで紹介していきたいと思います。また今回吉本興業さんとやりとりをし、使った素材の権利周り(著作権・肖像権)をきちんと解決した上で動画が投稿できたので、そちらについても言及いたします。

目次

  • 動画を投稿した目的
  • コンテンツ選定までの流れ
  • 権利周りの解決(吉本興業とのやりとり)
  • 技術的な話(AR, DRなど)
  • 投稿動画のクオリティ上げ
  • まとめ

動画を投稿した目的

動機としては正直に、

**「バズってみたかった」**んです。

通知が鳴り止まないという感覚を体験してみたかった... バズってみるってどんな感じなんだろうという気持ちでした。

本記事は僕が如何にしてコンテンツをバズらせるか?を考えて行動した奮闘記です。

コンテンツ選定までの流れ

さて、バズるために何ができるだろうと考えた時に、自分が普段ARを使ったものづくりをやっていることから 「テレビから人が飛び出してきたら面白いのでは?」 と思い至りコンテンツを固めていくことにしました。

さて、テレビからARで人を出現させるには3Dモデルが必要です。となると3Dのキャラクターが選択肢にあがるのですが

「これって、VTuberみたいなキャラクターが出てくるより、人間が出てくる方がおもしろいのでは?」 「でも自分の3Dモデルを公開している人なんて。。」

「...いた!!!」 VJ TAKAGI(バーチャルジョイマン高木)公式サイト

しかもこちらのモデル、以下が許可されています。

作成した二次創作物をWEB上に公表すること 制作物をWEBにアップOK!!

これは権利周り何も気にせずに使えるやつじゃないか!

「勝ったッ!第3部完!」(唐突なジョジョネタ)

ここで終わったらこの記事終わりですね。 いやいや続きがありますので、しばらくお付き合いください。

「いや待てよ、テレビから飛び出させるんだからテレビに何か動画流さないといけないよな。」

YouTubeの動画使おう! ↓ YouTubeの動画を漁る ↓ 良い動画(コントの動画)を見つける ↓ この動画を編集してこのタイミングで飛び出させたい

「でもちょっと待てよ。この動画勝手に使ったらダメなのでは?」 と思い至るわけです。

権利周りの解決

さて、YouTubeに投稿されているジョイマンさんのコント動画を使用する場合、以下の権利にそれぞれ抵触してしまうわけです。

  • 動画投稿者の投稿動画に関する著作権
  • ジョイマンさんの肖像権

joyman-lisence.png

これは何も断らずにそのまま投稿したらちょっと問題ありそうな気がしますね。。

最近twitterなどのSNSで創作物をあげる人が結構いると思うんですけど、 「これ権利的に大丈夫かな?」 っていうグレーなものが結構多い気がするんですよね。変な話。

権利周りの解決はとても面倒なので、グレーなまま投稿した方が正直創作のしやすさはあると思います。その気持ちもとてもわかります。でもやはりクリーンな開発を心がけていきたい気持ちもありまして。ということで今回はきちんと権利周りを解決してスッキリした気持ちでバズろうと決意したのでした。

話は戻りまして、 使用したいと思った動画の投稿者をみると、ちゃんとした会社が運営していました(一応社名は伏せておきます)。個人の投稿だとオリジナルコンテンツの許可を得て投稿していない可能性があり、今回目指しているクリーンな開発に反してしまう可能性が高いです。よって、ちゃんとした会社が投稿している方が権利周りがきちんと解決されると考えていたので、今回選んだ動画がそのように管理されていてとてもラッキーでした。

動画投稿者へ連絡

YouTubeのチャンネルの概要欄をみると以下の記載が。

動画の二次利用等の問い合わせはこちらから

ということで、さっそくメールを送ってみました。今回は完全に個人制作だったので、あくまで個人の作品であることを強調しました。下手に会社の名前を出すと面倒なことになる上に、もしかしたら使用許可が下りないかもしれないので。(逆に会社としてやった方がやりやすい場合もありますが)

するとすぐに返事が。

こちらは弊社で撮影した動画ですが、二次使用については吉本興業さんの許可が必要になってしまいます。 吉本興業さんに許可を取っていただきましたら、弊社の方からは使用料〇〇円で映像の使用について、許可を出すことができます。 この映像でなければならないのであれば、まずは、肖像権がある吉本興業さんに問い合わせていただけましたらと思います。 もし、無断で使用してしまうと、Twitterとはいえ、バズったら吉本興業さんの目に留まり、クレームを受けてしまうかもしれません。 無料の動画素材サイトの動画を使用するなどの方法もご検討いただいた方がよろしいかと思います。

上記のようにご丁寧に返信をいただけました。(ちなみに上記も掲載許可をいただきました。)

「あ、そうなのか確かに。でも自分で吉本興業さんに直接許可を取る必要があるのか。。」

この時は実は肖像権のことは頭からすっぽり抜けていました。。 吉本興業さんも巻き込む大事になりそうだったので、この時点で弱冠ヒヨりました。(お豆腐メンタル)

無料の動画を提案していただいたのですが、もう既に心はジョイマンの物になっていました。ジョイマンの動画を使うこと以外考えられない!(ありがとうオリゴ糖)

なので、もうここまできたら行けるところまで行ってしまえー!との思い切りから吉本興業に問い合わせてみることにしました。吉本興業の肖像権の問い合わせ窓口がわからなかったので、動画投稿をしている会社に吉本興業の権利周りの窓口の連絡先を教えていただきました。そこで教えていただいたのは「代表の電話番号」でした。

「え、代表って偉い人に許可とらないといけないの。。」 (またここでヒヨる。)

代表という意味をわかっていませんでした。(世間知らず)

【代表番号】 会社などで、2回線以上電話を架設している場合、それらの代表として定めておく一つの電話番号。

コトバンク デジタル大辞泉より。 なるほど、また一つ賢くなりました。そこまでビビらずに済みそうです。

吉本興業へ連絡

教えてもらった電話番号を調べてみると吉本興業事業所東京本部の窓口らしい。 早速かけてみることに。(とはいえかなり緊張しました)

https://www.yoshimoto.co.jp/corp/info/companies.html

吉本の社員さん?が電話に出まして 「担当者が会議中ですので、後ほど掛け直すか、メールでお問い合わせください。」

即答でメールでお願いしました。喋ると緊張するので...(コミュ障) もありますが、メールだと動画のリンクも貼れるし、やりとりの履歴も残る のでその方がいいと思いました。教えてもらったメールアドレスに問い合わせの結果、動画使用許可の確認をしてもらえることに!その際、以下のように質問を受けました。

Twitterを拝見させて頂きました。 これまで制作されたARインスタレーションの様子がわかる動画やサイトはございますでしょうか?

それを参考に許諾可能か社内確認してもらうんだそうです。 確かに、どこの馬の骨ともわからん者に大事な所属芸人さんが無下に扱われたら大変ですからね。

「しまった、自分の作品をまとめていない。。」

こういう時に、ちゃんと普段からポートフォリオを作っておいた方がいいなと思うわけです。(人間は怠惰な生き物ですね) そしてtwitterはいつ誰に見られてもいいように適当な発言は控えた方がいいですね(滝汗)

そうこうしているうちに返事がきました。

「該当の動画は吉本興業が撮影したものではなく、他社が撮影したものでそれに関して許可をすることはできない」 とのこと。

また、吉本興業では 「ネタ動画を他社サイトにて公開することを許諾していない」 そうです。

同イベントの弊社撮影動画がないか、確認をしておりますので、また改めて御連絡させて頂きます。

そこまで確認してくださるのですね。 本当に吉本興業さんの窓口は丁寧な対応をしてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。

一応、VJ TAKAGI(ジョイマン3Dモデル)の使用許可も聞いたのですが、こちらはやはり二次利用OKということで許諾確認の必要がないそうです。

ネタ動画を他社サイトにて公開することを許諾していない

「あぁ〜これは詰んだか。。」と思ったのですが、ジョイマン公式チャンネルの動画の使用を提案していただきました。ジョイマン公式チャンネルの動画は確認・許諾が容易になるそうです。

ジョイマン公式チャンネル https://www.youtube.com/channel/UCKq9WL1cD1jrpvWgHBqxSkw おもしろい動画ばかりなんですけどね。自分がやりたいデモには微妙に合わない。。やっぱりコントを使いたい!公式がコント動画を上げていたらそれを使いたかったのですが上がっていなかったようで。こちらも権利周りでしょうか。

そうこう考えているうちに返信が届き、以下の提案をしていただきました。

  1. ジョイマンチャンネルの動画を使用
  2. YouTubeの該当動画に関して今回デモ用に特別に許可をする

これは嬉しい知らせです! ジョイマンチャンネルの動画ですと許諾が容易に行えるわけですが、やはり自分が使いたい動画はコント動画だし吉本興業さんからのせっかくのご好意なので、2.のコント動画を特別に使用させていただくことにしました。もし動画を勝手に使っていたら通報されてしまい、投稿を取り下げなくてはならなくなったかもしれません。

ただ、ここで吉本興業さんが記事にまとめる上で強調してほしいとおっしゃっていたのは

「今回はARの制作物の内容にご協力させて頂くため、特別に許諾をした」

ということです。本来は、やはり他社サイトにあるネタ動画は許諾の範囲ではなく、また動画を使用したい目的によっては、確認の連絡を頂いても許諾できないこともあるから だそうです。そのあたりは目的によって使用できない可能性もあるので、要相談という形になりそうですね。今回の投稿は本当にご厚意の上になりたっているのだと感じております。

早速動画投稿者に連絡しました。すぐに返事がきて、動画使用に関する請求書を発行してもらい、使用料金をすぐ振り込みに行きました。動画加工の許諾も確認したところOKで、**「動画を何度使用しても構わない」**そうです。正直気軽に払える金額でもない出費でしたが、何度も使っていいことを考えると安いかもしれないですね。それにこの記事を書けるので、必要な出費だと思いました。

以上のように、複数の会社とやりとりをしてようやく動画の使用権利(著作権・肖像権)の許可が得られました。

技術的な話

まず、この投稿動画は以下の表現を行なっています。

  • ジョイマン高木氏を現実世界に召喚する「AR表現」
  • テレビからジョイマン高木氏を消す  「DR表現 (Diminished Reality, 隠消現実感)」

AR表現はiOSのARKitとUnityを使っています(撮影はiPhoneで画面収録)。ARKitをAR Foundationで使うナウい選択肢もあったのですが、今回位置合わせが大変で、毎回ビルドが必要でそのイテレーションのたびに待ち時間が発生するのが流石にしんどすぎたので ビルドせずにUnity上でARのデバッグができるARKitRemoteが使用できるUnityARKitPluginを使用しています。

位置合わせにはARKitの

  • 垂直面(テレビ面)検知
  • 水平面(床)検知

の機能をそれぞれ使用しています。テレビ上の垂直面をタップすると、その位置から3Dモデルが飛び出て、床の高さに降り立つように制御しています。テレビから飛び出すところと回転しながら地面に埋まるところは、テレビ・床の位置にそれぞれ「重なった部分を描画しない透明なシェーダー」を作成して使用しています。

DRの実現に関して、ジョイマン高木氏が飛び出した後にテレビの動画から高木氏が消えている一方で相方の池谷氏は動いたままです。DRとは、このように現実にある物体を視覚的に隠蔽・消去させる技術です。(動画を現実とカウントするかは怪しいですが)これはちゃんとやろうとすると画像処理でよしなにやると思うのですが、今回は単純に、ジョイマン高木氏を除いたマスク画像を作成し、それを動画編集ソフトでオーバーレイする形で簡易的に実現しています。

3DモデルはVJ-TAKAGI(3Dモデル)を使用したことに関しては上述した通りで、3DモデルのモーションはVJ-TAKAGIに含まれていたものとAdobeが提供しているmixamoという商用フリーのツールから拝借しました。 余談ですがmixamoはRigなし3DモデルにRigを簡単につけることができ、かついくつもバリエーションがあるモーションも落として来れる神ツールなのでおすすめです。

投稿動画のクオリティ上げ

投稿動画を見ると位置もタイミングも合っていてスムーズにテレビから飛び出ているように見えます。(のはず) 実はこれあらかじめ作っておいた動画から消えるタイミングに合わせてiPhoneの画面をタップして出現させています。そのタップのタイミングが結構シビアで、何度も練習しました。もっとうまい方法はあるかもしれないですがこの時は思いつきませんでした。また動画の再生タイミングもリモコンで制御しており、撮影手順は

  1. キャリブレーション(平面、テレビ検知)
  2. 3Dモデル出現位置確定
  3. iPhone画面収録開始
  4. 動画再生(リモコン)
  5. 動画タイミングに合わせてタップで出現
  6. カメラワーク
  7. セルフリアクション(声など)
  8. 再度タップで終了アニメーション

を以下の図のような姿勢で行なっている結構ハードな作業でした。 (イラストは知り合いに描いてもらいました。とても助かりました!)

撮影姿勢

さて、ここまでで作品は出来上がったのですが、やはりバズらせたいという目的からすると第三者からの意見が必要になってきます。これを知り合い何人かに見せてフィードバックをもらい改善、を繰り返して良いものにブラッシュアップしていきました。もらった意見としては

  • モデル出現時のインパクト増大のため、拡大率をあげる
  • 出現時、カメラワークのパン演出
  • バズらせたいのであれば動画編集で盛り上げる、面白いオチをつける

などです。これをするために何度も撮り直し、面白演出として、DJ-TAKAGIが大量に発生する実装をしたり、次の日仕事があるのに朝6時半まで開発したり(朝セミが鳴き出す、朝チュンならぬ朝ミン)。バズらせるために面白系に振り切ろうと色々行なったのですが、ごちゃごちゃして伝えたいことが分散してしまいそうだったので最終的にシンプルな形にしました。 単純にバズらせようと思ったらもっとバカやるとか色々できたと思うのですが、今回技術も絡めてバズらせたい気持ちになりました。そこはエンジニアの性というやつでしょう。また、投稿文言も「AR使ってみた」とかは言わず一般の人にわかりやすいようにしました。ARって聞くと身構えちゃう気がしたので、よくバズっているのを見る「自分が開発者的なもの」ではなく、第三者的な発言にしました。あえて言及しないことで、どうやって実現しているのか不思議がる人もいて、そういった面白さもありました。

まとめ(感想)

今回色々奮闘した結果、「狙ってバズらせるのは結構大変なんだな。」としみじみ思いました。でも結果的にバズれて良かったです!バズったのは本人がリツイートしてくださったのが大きいです。本当にありがたいです。そして、今回動画の使用を特別に許可してくださった吉本興業さんにも感謝です。これはきちんと権利の許可を得るというクリーンな開発を心がけた産物だと思います。 また、ジョイマンさんというコンテンツに乗っかる形になってしまいましたが、今回の投稿が何かお笑いの表現の手助けになれればと思います。 そして権利周りの解決をしてみて非常に勉強になりました。やはり権利の解決は結構大変なんですよね。 そもそも権利周りが簡単なコンテンツを選べばいいといえばそれまでではあるのですが、 今回のDJ-TAKAGIのように、クリエイターが使える素材が増えていくとより創作活動が加速していきそうですね。

この記事がコンテンツをバズらせたいと思っている方の参考になれば幸いです。ありがとうございました。

参考

バズるために参考にした記事 (著者のイワケンくんにも色々アドバイスいただきました) 【朝起きてからバズるまで】 世界一(?)スマートにVTuberになるシステムをマッハ開発した

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